今回はザ・ポーグスのランキングを作成しました。
彼らはケルト音楽とロックを組み合わせた愛嬌のあるバンドです
アップの躍動感とバラードの情感、どちらも絶品です。
この記事ではその両面をご紹介してみました。
- 1 1位「Fairytale of New York」(アルバム:If I Should Fall from Grace with God)
- 2 2位「Sunny Side of the Street」(アルバム:Hell’s Ditch)
- 3 3位「Fiesta」(アルバム:If I Should Fall from Grace with God)
- 4 4位「Sally MacLennane」(アルバム:Rum Sodomy & the Lash)
- 5 5位「A Rainy Night in Soho」(アルバム:The Very Best Of The Pogues)
- 6 6位「If I Should Fall from Grace with God」(アルバム:If I Should Fall from Grace with God)
- 7 7位「Streams of Whiskey」(アルバム:Red Roses for Me)
- 8 8位「Rain Street」(アルバム:Hell’s Ditch)
- 9 9位「Blue Heaven」(アルバム:Peace and Love)
- 10 10位「And the Band Played Waltzing Matilda」(アルバム:Rum Sodomy & the Lash)
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1位「Fairytale of New York」(アルバム:If I Should Fall from Grace with God)
■曲名:Fairytale of New York
■曲名邦題:ニューヨークの夢
■アルバム名:If I Should Fall from Grace with God
■アルバム名邦題:堕ちた天使
■動画リンク:「Fairytale of New York」
この曲の歌詞は短編小説といってもいいかもしれません。
登場人物の男女は、どちらも異国の地ニューヨークに住むアイルランド移民。
2人はニューヨークで出会い、クリスマス・イヴの日に初めて手を握りました。
かつて女性はブロードウェイでの成功を夢見ていたようです。
それから年月が過ぎ、おそらく2人は結婚したのでしょう。
途中かなり荒っぽいやりとりの後、女性はあなたと出会ったことで、自分の夢は終わってしまったとつぶやきました。
それに対して男性は、その夢ならまだこの胸の中にある。
これから2人の夢を叶えようと答えました。
その時ニューヨーク市警の聖歌隊が、故郷アイルランドの歌を歌っていました。
2位「Sunny Side of the Street」(アルバム:Hell’s Ditch)
■曲名:Sunny Side of the Street
■曲名邦題:サニーサイド・オブ・ストリート
■アルバム名:Hell’s Ditch
■アルバム名邦題:ヘルズ・ディッチ
■動画リンク:「Sunny Side of the Street」
今回の記事は、シェイン・マガウアン(Shane MacGowan)在籍時のみ対象にしています。
シェインはメイン・ボーカリストとメイン・ソングライターとしてバンドの個性を決定付けた存在でした。
一般的に優秀なバンドが陥りがちな罠があるような気がします。
それは質が高いというだけでは充分ではないということ。
そこに個性が加わって、初めて認められることが多いように思います。
私はシェイン脱退後のボーカルについて、にごりと情感が足りないと感じました。
にごりはうまみです。
逆に言えば、シェインの声に自然と備わっている含みのようなものが、バンド全体の個性になっていました。
シェイン脱退後も音楽の質そのものはそこまで落ちていません。
ただ個性が薄れて質の高さだけで訴求するのは、かなりのハードモードかもしれません。
一方のシェインは、ソロでポーグスよりポーグスらしい曲を発表しました。
Shane MacGowan and the Popes – Paddy Rolling Stone
3位「Fiesta」(アルバム:If I Should Fall from Grace with God)
■曲名:Fiesta
■曲名邦題:フィエスタ
■アルバム名:If I Should Fall from Grace with God
■アルバム名邦題:堕ちた天使
■動画リンク:「Fiesta」
彼らはアップとスローのどちらも極上です。
スローの最高傑作が「Fairytale of New York」だとしたら、アップを代表するのはこの曲かもしれません。
彼らのルーツの半分はパンクです。
そこにアイルランドのケルト・ミュージックを取り入れて「ケルティック・パンク」と言われています。
この曲はその路線を象徴する曲。
その音楽はドロップキック・マーフィーズ(Dropkick Murphys)などに継承されました。
シェイン・マガウアンは、ロンドン生まれのアイルランド人。
彼はケルト音楽とロンドン・パンクを肌感覚で知っています。
パンクを感じさせる部分では、ザ・クラッシュ(The Clash)にも似た雑食性の生命力を感じます。
4位「Sally MacLennane」(アルバム:Rum Sodomy & the Lash)
■曲名:Sally MacLennane
■曲名邦題:サリー・マクレナン
■アルバム名:Rum Sodomy & the Lash
■アルバム名邦題:ラム酒、愛、そして鞭の響き
■動画リンク:「Sally MacLennane」
彼らはケルト音楽を大胆に取り入れています。
ただケルト音楽といっても、そのイメージは様々かもしれません。
一般的にはエンヤ(Enya)やケルティック・ウーマン(Celtic Woman)などが有名ですが、それも一面にすぎません。
内実は多種多様な「ワールド・ミュージック」という呼称に近い感じがします。
つまりおおまかで少しマーケティングの匂いがする言葉。
私はチーフタンズ(The Chieftains)あたりが中心に近いと思っていますが、違う意見もあることでしょう。
ポーグスのルーツは、カバーしている伝承曲を見るとある程度うかがえます。
ただこの曲はトラディショナル・ソングではなくオリジナルです。
しかし演奏は伝統音楽そのものですね。
こうしたオリジナルと伝承曲の自然な融合が彼らの特徴でした。
5位「A Rainy Night in Soho」(アルバム:The Very Best Of The Pogues)
■曲名:A Rainy Night in Soho
■曲名邦題:レイニー・ナイト・イン・ソーホー
■アルバム名:The Very Best Of The Pogues
■動画リンク:「A Rainy Night in Soho」
今回は選曲が単調にならないよう意識しました。
彼らの最大の魅力は、勢いと愛嬌のあるアップテンポの曲かもしれません。
しかしそういう曲ばかりだといささか単調になりがち。
そこで適宜バラードを配置することにしました。
改めて聞き直してバラードの良さを実感したこともありますが。
シェインのボーカルは、よくトム・ウェイツ(Tom Waits)と比較されます。
トム・ウェイツはバラードに名曲が多い人ですが、シェインも同じタイプです。
どちらも無骨ですが、情感の表現にすぐれたシンガー。
「聖なる酔っぱらいの伝説」「酒びたりのイノセンス」とでも表現したくなる、お酒が似合う歌唱が魅力です。
6位「If I Should Fall from Grace with God」(アルバム:If I Should Fall from Grace with God)
■曲名:If I Should Fall from Grace with God
■曲名邦題:堕ちた天使
■アルバム名:If I Should Fall from Grace with God
■アルバム名邦題:堕ちた天使
■動画リンク:「If I Should Fall from Grace with God」
彼らの最高傑作は、このアルバムだと言われています。
良い曲が多いだけでなく、全体のバランスも良いですし。
それにはプロデューサーのスティーヴン・リリーホワイト(Stephen Lillywhite)の功績が大きかったかもしれません。
彼らはプロデューサーを頻繁に変えてきましたが、唯一スティーヴン・リリーホワイトだけは次作もプロデュースしています。
さすがはテープ・オペレーターから始まり、後に大英帝国勲章を授与された人です。
彼の功績はバンドの魅力を損なうことなく、多くの人に受け入れられるようにしたこと。
実際イギリスのアルバムチャートで3位と、セールス的にも大成功を収めました。
「Fairytale of New York」では、妻のカースティ・マッコール(Kirsty MacColl)とシェインのデュエットも実現させましたし。
曲名とアルバム名の「もし私が神の愛を得る座から堕ちてしまったら」というのもいいですね。
7位「Streams of Whiskey」(アルバム:Red Roses for Me)
■曲名:Streams of Whiskey
■曲名邦題:ストリームズ・オブ・ウィスキー
■アルバム名:Red Roses for Me
■アルバム名邦題:赤い薔薇を僕に
■動画リンク:「Streams of Whiskey」
デビュー・アルバムの曲です。
彼らの前身はポーグ・マホーン(Pogue Mahone)というバンドです。
当時の曲をご紹介しましょう。
Pogue Mahone – Boys From The County Hell
既にこの頃には音楽性が固まっていたようですね。
ただ「Pogue Mahone」というバンド名は、ゲール語で「俺のケツにキスをしろ」という意味。
それがBBCから問題視され、夜以外の時間帯は放送禁止となりました。
そのため今のバンド名に改名したそうです。
8位「Rain Street」(アルバム:Hell’s Ditch)
■曲名:Rain Street
■曲名邦題:レイン・ストリート
■アルバム名:Hell’s Ditch
■アルバム名邦題:ヘルズ・ディッチ
■動画リンク:「Rain Street」
シェイン在籍時の最後のアルバムです。
当時彼は酒やドラッグの問題を抱えていました。
バンドには良い人材がまだ残っていましたが、しばらく過渡期が続きました。
一時はこのアルバムのプロデューサーであるジョー・ストラマー(Joe Strummer)が加入しましたが、最終的にはスパイダー・ステイシー(Spider Stacy)がメインボーカルに就任。
当初は私の好きなテリー・ウッズ(Terry Woods)もまだいましたし。
夫婦デュオ時代のテリー・ウッズの曲をご紹介しておきましょう。
Gay & Terry Woods – We Can Work This One Out
ただ奮闘及ばずセールス面では低迷し、ついに1996年に解散することになりました。
その後2001年に再結成し、その時にはシェインも参加しています。
9位「Blue Heaven」(アルバム:Peace and Love)
■曲名:Blue Heaven
■曲名邦題:ブルー・ヘヴン
■アルバム名:Peace and Love
■アルバム名邦題:ピース&ラヴ
■動画リンク:「Blue Heaven」
傑作と名高い前作「If I Should Fall from Grace with God」の次作です。
この作品はアルバム・ジャケットが話題になりました。
良く見ると「peace」と書かれた方の手の指が、6本になっています。
このアルバムは前作と比べると目立つ曲が少ないですが、決して悪い出来ではありません。
ただ個人的には彼らのイメージとは違う1曲目で損をしているように思いますが。
初期と比べると伝統からロック寄りにシフトした感じがします。
またシェインの書いた曲が減り、他のメンバーが書いた曲が増えました。
この曲もその1曲。
従来の魅力が薄れてきた感じもしますが、この曲は純粋に良い出来だと思います
10位「And the Band Played Waltzing Matilda」(アルバム:Rum Sodomy & the Lash)
■曲名:And the Band Played Waltzing Matilda
■曲名邦題:ザ・バンド・プレイド・ウォルツィング・マティルダ
■アルバム名:Rum Sodomy & the Lash
■アルバム名邦題:ラム酒、愛、そして鞭の響き
■動画リンク:「And the Band Played Waltzing Matilda」
彼らはこのアルバムが全英アルバムチャートで13位を記録し、一躍ブレイクしました。
その立役者は、プロデューサーのエルヴィス・コステロ(Elvis Costello)。
ファースト・アルバムの彼らは、勢いそのままの躍動感が魅力でした。
しかし一方で少し単調だったかもしれません。
このセカンドでは、その点を修正しようとする意図を感じます。
音楽の幅が広がって、アルバム通じての緩急がとても効果的です。
その結果、彼らの魅力がより引き立ちました。
加えてシェインの歌に焦点が当てられています。
そうでなければ8分14秒という長さのこの曲を、彼のボーカルに託したりしないでしょう。
プロデューサーとしてのコステロは、自分の刻印を押すタイプではありません。
ザ・スペシャルズ(The Specials)やニック・ロウ(Nick Lowe)のプロデュース時にも感じますが、今の魅力を更に引き出すことに長けています。
良い素材と良い料理人がそろった時、ザ・ポーグスは本領を発揮し始めました。
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