今回はノイ!のランキングを作成しました。
このバンドはジャーマン・プログレやクラウト・ロックと分類されることが多いと思います。
本来彼らは実験色が強い音楽をやる人たちですが、一方でとてもポップな一面を兼ね備えています。
今回は気軽に彼らの音楽を楽しめるよう、ポップな側面に焦点を当ててみました。
無機質なはずなのに人間くさい、彼らのハンマービートをご堪能ください。
- 1 1位「Hallogallo」(アルバム:Neu!)
- 2 2位「Fur Immer(Forever) 」(アルバム:Neu!2)
- 3 3位「Isi」(アルバム:Neu!’75)
- 4 4位「Good Life」(アルバム:Neu!’86)
- 5 5位「Drive (Grundfunken)」(アルバム:Neu!’86)
- 6 6位「Hero」(アルバム:Neu!’75)
- 7 7位「E-Musik」(アルバム:Neu!’75)
- 8 8位「Neuschnee」(アルバム:Neu!2)
- 9 9位「La Bomba (Stop Apartheid World-Wide!) 」(アルバム:Neu!’86)
- 10 10位「Quick Wave Machinelle」(アルバム:Neu! 4)
1位「Hallogallo」(アルバム:Neu!)
■曲名:Hallogallo
■曲名邦題:ハロガロ
■アルバム名:Neu!
■アルバム名邦題:ノイ!
■動画リンク:「Hallogallo」
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この曲はノイ!の代表曲です。
「NEU」というバンド名は、日本語で「新しい」という意味だそうです。
つまり新しい音楽をつくり出そうというコンセプトを持ったバンドということのようです。
この曲はデビューアルバムの1曲目で、まずは挨拶代わりと一撃といったところでしょうか。
このアルバムは1972年に発売されましたが、この頃は泥くさいサザンソウルがヒットチャートの1位を獲得したり、シンガーソングライターやスワンプ・ロックなど、素朴な音楽の全盛時代でした。
ちなみにディープ・パープル(Deep Purple)の不朽の名作「マシン・ヘッド(Machine Head)」も、この年にリリースされています。
おそらく当時としては、この曲はかなり新しい部類の音楽だったと思われます。
ちなみにこの曲は当時西ドイツで、3万5千枚売れたそうです。
この3万5千枚という数字について、全く売れなかったという声と、意外と売れたではないかという評価とで分かれています。
私の意見としては、もちろん大ヒットとは言い難いと思います。
ただこのアルバムはこの曲以外、普通の人向けではない実験的な曲ばかりが収録されています。
商業音楽ではそれほどでもない枚数かもしれませんが、この種の音楽としては異例のセールスだったと思います。
時代の胎動を感じたのが、3万5千人いたということでしょう。
しかしこの曲はシングルだと思っていましたが、ウィキペディアを見る限りシングルカットされていないのですね。
このぐらいの有名曲がシングルカットされていないのは、とても珍しいと思います。
2位「Fur Immer(Forever) 」(アルバム:Neu!2)
■曲名:Fur Immer(Forever)
■曲名邦題:フュア・インマー
■アルバム名:Neu!2
■アルバム名邦題:ノイ!2
■動画リンク:「Fur Immer(Forever) 」
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ファーストアルバムは大ヒットと言い難かったものの、一部では熱狂的に支持されました。
賞賛の声は、ほぼ「Hallogallo」に集中していたようです。
それに気をよくした彼らは「Hallogallo」のようなタイプの曲を増やし、セカンドアルバムをリリースしました。
その内の1曲がこの曲です。
確かにこの曲は「Hallogallo」に似ています。
このようなひたすら同じリズムを刻む彼らのドラムは「ハンマービート」と呼ばれています。
とても単調な演奏ですが、むしろその単調さゆえに価値があります。
そのリズムの上で、ギターなどの上ものが変化していきますので、意外と飽きずに聞くことができます。
言葉だけで説明すると、どこが良いのかと思われるかもしれません。
実際に聞いてみないと理解が難しいと思います。
この曲は10分を超えていますが、繰り返されるドラムの演奏を聞いていると、テンションが上がりハイな気分になってきます。
彼らのハンマービートは、機械的な反復なのに、不思議と人間らしさが感じられます。
人力テクノみたいな魅力を持つ曲です。
3位「Isi」(アルバム:Neu!’75)
■曲名:Isi
■曲名邦題:イージー
■アルバム名:Neu!’75
■アルバム名邦題:ノイ!75
■動画リンク:「Isi」
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さて長いウォーミングアップが終わったところで、今回の趣旨に沿ったポップな曲をご紹介します。
ノイ!のアルバムの中では、最初の2枚ばかりが名盤と言及されることが多いように思います。
私も異存はありませんが、普段聞くことが多いのは「Neu!’75」「Neu!’86」あたりです。
ポップで聞きやすくなった為、硬派なファンからはあまり良い評価を受けていませんが、たとえばこの曲などはいかがでしょうか。
この曲はシングルカットもされています。
ドラムが単調なパターンを刻むのは従来通りですが、上もののピアノがより音楽的になってきています。
この当時ドラム担当のクラウス・ディンガー (Michael Rother) は、ギター・キーボード担当のミヒャエル・ローター(Michael Rother)との関係が悪化していました。
その為彼らはそれぞれの曲を持ち寄って、どうにかこのアルバムを完成させました。
この曲はミヒャエル・ローター側の曲です。
「Hallogallo」ほどスリルはありませんが、より成熟した音楽の方向に向かおうとしているように感じられます。
4位「Good Life」(アルバム:Neu!’86)
■曲名:Good Life
■曲名邦題:グッド・ライフ
■アルバム名:Neu!’86
■アルバム名邦題:ノイ!86
■動画リンク:「Good Life」
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さて今度は更にポップな曲をご紹介します。
この曲はとても分厚いシンセサイザーの音が特徴です。
ほとんどエレクトロ・ポップ(エレポップ)といっても差し支えない曲かもしれません。
彼らの曲にしては珍しくまともなボーカルが乗っかっていますが、一方でシンセサイザーの音色が少しおかしいように感じられます。
シンセの音が分厚すぎたり、ポップな演出が過剰すぎるせいかもしれません。
そのむせ返る濃厚なポップ風味と、バランスの悪いサウンドゆえか、ポップな曲なのに毒みたいなものが感じられます。
このアルバムがレコーディングされた1980年代中盤は、エレポップがヒットチャートを席巻していました。
あまり指摘されませんが、エレポップの一部のバンドは、ジャーマン・プログレの流れを汲んでいます。
たとえばユーリズミックス(Eurythmics)は、このアルバムも担当しているコニープランク(Conny Plank)のプロデュースでデビューしました。
当時人気のエレポップのアルバムを聞くと、意外とダークだったり、実験的な面が垣間見える時があります。
彼らはシングルでは聞きやすい曲をリリースしつつも、アルバムに毒を忍ばせていたのですね。
その源流にあたるノイ!にも、ポップな毒があることを再確認できる曲です。
5位「Drive (Grundfunken)」(アルバム:Neu!’86)
■曲名:Drive (Grundfunken)
■曲名邦題:ドライヴ(グルントフンケン)
■アルバム名:Neu!’86
■アルバム名邦題:ノイ!86
■動画リンク:「Drive (Grundfunken)」
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さて先程と同じ「Neu!’86」からの選曲です。
ただこの曲では昔のようなハンマービートをやっています。
昔と違うのは、上に乗っている音が、昔に比べて整理されているところです。
買った当初私はこのアルバムに失望しましたが、何度か聞きなおす内にこの曲が耳に留まりました。
買ったアルバムが失敗だと思った場合、お金を無駄にしたとは思いたくない為、良いところを探そうと何度も聞きなおすことはないでしょうか。
私もそういう感じで聞き返していたところ、この曲を入り口にして、アルバムの良さが分かってきました。
この曲は過去のハンマービートの曲と比べるとスリルは減少していますが、一方で新しいポップな魅力を獲得しています。
「Hallogallo」と比較するよりも、カーズ(The Cars)あたりと同列で聞いた方がいいのかもしれません。
6位「Hero」(アルバム:Neu!’75)
■曲名:Hero
■曲名邦題:ヒーロー
■アルバム名:Neu!’75
■アルバム名邦題:ノイ!75
■動画リンク:「Hero」
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この曲はクラウス・ディンガー色の強い曲です。
デヴィッド・ボウイ(David Bowie)のファンならば、このバンドがベルリン時代のボウイに大きな影響を与えたことをご存知かもしれません。
ちなみにボウイの名作「Heroes(英雄夢語り)」のタイトルは、この曲から取られています。
音楽的にもその頃のボウイの音楽に近い感じがしますね。
また破れかぶれな歌い方が、いかにもニュー・ウェイヴのボーカルスタイルといった印象を受けます。
もちろんそれもボウイの場合と同じく、この曲の方がオリジナルです。
実際この曲は、ニュー・ウェイヴやポスト・パンクなど様々なバンドに影響を与えています。
広範な影響力という点では「Hallogallo」と双璧の曲といえるかもしれません。
7位「E-Musik」(アルバム:Neu!’75)
■曲名:E-Musik
■曲名邦題:エー・ムジーク
■アルバム名:Neu!’75
■アルバム名邦題:ノイ!75
■動画リンク:「E-Musik」
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この曲も軽めのハンマービートナンバーです。
2人はデビュー時にはやりたいことが合致していたようですが、本来の持ち味は水と油です。
大まかに表現すると、音楽に激しかったり混乱した要素を好むクラウス・ディンガーと、アンビニエントでより音楽的な豊かさを好むミヒャエル・ローターという対比になるかもしれません。
初期はミヒャエル・ローターもサイケデリックなギターを弾くことがありましたが、その後彼はより音楽的に成熟した方向へと向かいます。
この曲は前半はクラウス・ディンガーっぽいハンマービート、後半はミヒャエル・ローターらしいアンビニエントで終わります。
2人が互いに譲らず、水と油のごとく分離した構成となっています。
ただ2人には組み合わせの妙があって、全く別々な方向を向いてすれ違いながらも、このようなオフバランスの名曲を生み出すようなことがあります。
8位「Neuschnee」(アルバム:Neu!2)
■曲名:Neuschnee
■曲名邦題:ノイシュネー
■アルバム名:Neu!2
■アルバム名邦題:ノイ!2
■動画リンク:「Neuschnee」
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この曲は同じアルバムに「Neuschnee78」という似た曲があります。
つまり同じアルバムに「Neuschnee」「Neuschnee78」という別々の曲が収録されています。
まぎわらしいですね。
この曲は同じアルバムに収録されている「Fur Immer(Forever) 」に似た曲調です。
昔この曲についてあるディスクレビューを読んだことがあります。
その記事の中で、この曲では緩急を付けているけれど、そんなものはいらないという内容が書いてあって、私も同感だと思いました。
彼らの魅力は、もしかしたら非音楽的なところにあるのかもしれません。
彼らの音楽は感情に訴えかけてくるものではありません。
聞いているとハイになってくるとか、生理的に心地よいとかそういう類のものです。
つまり食料ではなく薬みたいなものに近いかもしれません。
単純に同じペースで同じパターンのドラムを聞いていれば自然と身体に作用してくるので、むしろビートを維持してくれることを望んでしまうのですね。
ただそういう欠点があっても、この曲はなかなかすばらしい曲だと思います。
だからこそ尚更もったいないと思ってしまうのかもしれません。
9位「La Bomba (Stop Apartheid World-Wide!) 」(アルバム:Neu!’86)
■曲名:La Bomba (Stop Apartheid World-Wide!)
■曲名邦題:ラ・ボンバ(ストップ・アパルトヘイト・ワールドワイド!)
■アルバム名:Neu!’86
■アルバム名邦題:ノイ!86
■動画リンク:「La Bomba (Stop Apartheid World-Wide!) 」
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彼らは「Neu!’75」の後一度解散しますが、その後1985~86年に再度集まってレコーディングを行っています。
その時のレコーディングにローターが手を加え、2010年に発売したのがこのアルバムです。
さてこの曲を聞くと、あまりのポップさに驚くかもしれません。
もしかしたらキラキラしすぎていると失望する人もいるかもしれません。
しかしよく聞くと、表面はキラキラしていても、彼ららしい実験的なところが数多く見つかる曲です。
「La Bomba」という曲名の通り、ところどころ悪ふざけみたいな感じで「ラ・バンバ」と歌っています。
サウンドコラージュ風の変な音も差し込まれています。
先程の「Good Life」のように、ポップになればなるほど毒が浮かび上がる「毒ポップ」の名曲だと思います。
10位「Quick Wave Machinelle」(アルバム:Neu! 4)
■曲名:Quick Wave Machinelle
■曲名邦題:機械的な波
■アルバム名:Neu! 4
■アルバム名邦題:ノイ!4
■動画リンク:「Quick Wave Machinelle」
このアルバムは「Neu! 4」という幻のアルバムからの選曲です。
先程述べたように、彼らは解散をしてからもう一度集まってレコーディングしましたが、結局完成させることができませんでした。
その時の録音はお蔵入りになったはずでしたが、クラウス・ディンガーがローターに許可をとらず、勝手にリリースしてしまいました。
それがこのアルバムです。
その後2人は裁判で争うことになり、結果的にローターがこのアルバムの権利を獲得することになりました。
それが「Neu!’86」です。
要するに「Neu! 4」と「Neu!’86」は同じ音源を元にしていて、クラウス・ディンガーが手を加えたのが「Neu! 4」、ミヒャエル・ローターが手を加えたのが「Neu!’86」ということになります。
同じ音源を使っていますが、一部収録曲が異なりますし、曲の長さや曲の印象もかなり異なります。
全く別ものと考えた方がいいかもしれません。
この曲は「Neu!’86」に比べてキラキラしていませんが、気分が高揚するすばらしい曲です。