今回はリトル・フィートのランキングを作成しました。
私はこのバンドを3つの時期に分けて考えています。
まずファーストアルバムから「Dixie Chicken」まで、ローウェル・ジョージが主導権を握っていた時期。
次に「Feats Don’t Fail Me Now」「The Last Record Album」「Time Loves a Hero」「Down on the Farm」など、ビル・ペインやポール・バレアが主導権を握っていた時期。
最後に再結成後の「Let It Roll」から現在までの時期です。
どの時期も充実した作品をリリースしていますが、今回はローウェル・ジョージ時代を中心に選曲してみました。
もし気に入ったら、他の時期の作品もチェックしてみてください。
- 1 1位「Dixie Chicken」(アルバム:Dixie Chicken)
- 2 2位「Willin’」(アルバム:Sailin’ Shoes)
- 3 3位「Truck Stop Girl」(アルバム:Little Feat)
- 4 4位「Easy to Slip」(アルバム:Sailin’ Shoes)
- 5 5位「Texas Rose Cafe」(アルバム:Sailin’ Shoes)
- 6 6位「Two Trains」(アルバム:Dixie Chicken)
- 7 7位「I’ve Been the One」(アルバム:Little Feat)
- 8 8位「Long Distance Love」(アルバム:The Last Record Album)
- 9 9位「Fat Man in the Bathtub」(アルバム:Dixie Chicken)
- 10 10位「Trouble」(アルバム:Sailin’ Shoes)
1位「Dixie Chicken」(アルバム:Dixie Chicken)
■曲名:Dixie Chicken
■曲名邦題:ディキシー・チキン
■アルバム名:Dixie Chicken
■アルバム名邦題:ディキシー・チキン
■動画リンク:「Dixie Chicken」
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このアルバムから彼らの音楽は大きく変わりました。
ポイントは、アメリカ南部音楽の導入です。
「ディキシー・チキン」とは「南部の鳥」という意味です。
ネイティブのアメリカ人ならば、何かの隠語であったり、細かなニューアンスもご存知かもしれません。
私が知っているのは、南部のスワンプ・ロックなどでは、よく鶏の鳴き声を模したピアノが入っているということです。
この曲でもイントロでピアノがカンカン鳴っていますよね。
あともう1つ南部の音楽の影響が感じられるのは、コッテリとした分厚い女性コーラスです。
この曲でもバックコーラスという枠を超えて、女性コーラスがかなり目立っていないでしょうか。
実は彼らはカルフォルニア出身のバンドなので、南部生粋のバンドではありません。
そのせいかこの路線は1枚限りとなりましたが、ここではよそ者版の南部音楽は大成功を収めています。
2位「Willin’」(アルバム:Sailin’ Shoes)
■曲名:Willin’
■曲名邦題:ウィリン
■アルバム名:Sailin’ Shoes
■アルバム名邦題:セイリン・シューズ
■動画リンク:「Willin’」
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この曲を書いたローウェル・ジョージ(Lowell George)は、元々フランク・ザッパ(Frank Zappa)率いる「マザーズ・オブ・インヴェンション(The Mothers of Invention)」に所属していました。
ローウェルは在籍時この曲を書き、麻薬嫌いのフランク・ザッパに聞かせたところ、ドラッグの運び屋ドライバーの曲であることを理由に却下されたそうです。
そのせいでローウェルはザッパのバンドを辞めることになりました。クビになったそうです。
そこで彼はリトル・フィートを結成し、この曲をファーストアルバムに収録しました。
またセカンドアルバムでも同じ曲を再演しています。
よほど聞いてもらいたかったのでしょうね。
先程この曲をドラッグの運び屋の曲と申し上げました。
そう言われていますが、今回改めて歌詞を読んでみると、それほどドラッグ中心の歌詞ではないように感じられました。
「Willin’」とは「喜んで」というような意味です。
いつでも、どんな天気でも、何でも、喜んで運んでやるよという感じの歌詞です。
確かに白い何かとか草とか怪しい言葉も出てきますが、基本的にはトラックドライバーという仕事に共感を寄せている曲だと思いました。
3位「Truck Stop Girl」(アルバム:Little Feat)
■曲名:Truck Stop Girl
■曲名邦題:トラック・ストップ・ガール
■アルバム名:Little Feat
■アルバム名邦題:リトル・フィート・ファースト
■動画リンク:「Truck Stop Girl」
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先程の「Willin’」と同じく、トラックドライバーをテーマにした曲です。
こちらはトラックドライバーが「Truck Stop」と呼ばれる給油や食事がとれる場所で働いている女性に恋をしたという内容です。
なぜトラックにこだわっているのか、ローウェル・ジョージの生い立ちを調べてみました。
するとガソリンスタンドでアルバイトをしていたことが判明しました。
おそらくこの曲も、その頃の思い出を元にして書かれたのではないでしょうか。
ちなみにこの曲は、ザ・バーズ(The Byrds)が「タイトルのないアルバム(Untitled)」でカバーしているバージョンが有名です。
そういう有名曲が入っているのに、このアルバムは過小評価されているかもしれません。
惜しくも選外となりましが、他にも「Crazy Captain Gunboat Willie」という名曲も収録されています。
4位「Easy to Slip」(アルバム:Sailin’ Shoes)
■曲名:Easy to Slip
■曲名邦題:イージー・トゥ・スリップ
■アルバム名:Sailin’ Shoes
■アルバム名邦題:セイリン・シューズ
■動画リンク:「Easy to Slip」
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このバンドをアメリカのローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)という言い方をする人もいます。
確かに「Sailin’ Shoes」「Dixie Chicken」あたりでは、ストーンズとの共通点が感じられます。
「Dixie Chicken」は「レット・イット・ブリード(Let It Bleed)」あたりをヒントにしたのかもしれません。
「Roll Um Easy」は「No Expectations」みたいですし、この曲のイントロも「Street Fighting Man」のギターの鳴り方に近いように感じられます。
コーラスの重ね方なども、かなり影響を受けている感じがしますしね。
またこのアルバムから彼らのトレードマークともいえる、ネオンパーク(NeonPark)がアルバムジャケットを手掛けるようになりました。
これはおそらくフランク・ザッパが「Weasels Ripped My Flesh(いたち野郎)」で、ネオンパークを起用したのを真似したのだと思われます。
後に彼らはオンリーワンともいえる存在となりましたが、その過程では他から影響を受けまくってきたのですね。
5位「Texas Rose Cafe」(アルバム:Sailin’ Shoes)
■曲名:Texas Rose Cafe
■曲名邦題:テキサス・ローズ・カフェ
■アルバム名:Sailin’ Shoes
■アルバム名邦題:セイリン・シューズ
■動画リンク:「Texas Rose Cafe」
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この曲は実在するカフェのことを歌っている曲です。
ローウェル・ジョージがあるヒッピー用のレストランに入って、とても気に入ったのだそうです。
そういういきさつゆえか、この曲には映像喚起力が感じられないでしょうか。
このアルバムにはこの曲以外にも、音のすき間が感じられる曲が多いように思います。
たとえばこの曲の最初の30秒ほどを聞いていただければと思います。
ボーカル以外にも多くの楽器が入っていますが、演奏は意外なほどスカスカな印象です。
まるで音の空間を埋めてしまわない様に、皆で示し合わせているかのようです。
そのすき間のせいで、とても想像力をかき立てる音楽空間ができ上っています。
また1:56から唐突にプログレッシブな展開になりますが、少しアウトな要素を活用することはザッパから学んだのでしょう。
まるで趣味の良いミニシアター系映画を見ているような気分にさせてくれる曲です。
6位「Two Trains」(アルバム:Dixie Chicken)
■曲名:Two Trains
■曲名邦題:トゥー・トレインズ
■アルバム名:Dixie Chicken
■アルバム名邦題:ディキシー・チキン
■動画リンク:「Two Trains」
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このアルバムで彼らはメンバー構成を変えています。
新たにギタリストのポール・バレア(Paul Barrere)とパーカッショニストのサム・クレイトン(Sam Clayton)が加わりました。
この変更はこれから彼らが向かう先を示唆していたと思います。
ポールはロックだけでなく、ジャズやケイジャン音楽など、幅広いバックグラウンドを持っている人です。
ポールは早速このアルバムの曲作りにも参加して、次作「Feats Don’t Fail Me Now」でも「Skin it Back」という、後期を代表する名曲を書きました。
後のフュージョン・ロック路線のキーマンです。
またパーカショニストを加入させたのは、もちろんリズムを重視していくということだと思わます。
実際この曲でもパーカッションが活躍していますね。
またベースもロイ・エストラーダ(Roy Estrada)から、ケニー・グラッドニー(Kenny Gradney)に替わりました。
そのせいでリズムが少し粘っこくなったように思います。
この曲ではその変更がいきなり良い結果を出しているように思われます。
7位「I’ve Been the One」(アルバム:Little Feat)
■曲名:I’ve Been the One
■曲名邦題:アイヴ・ビーン・ザ・ワン
■アルバム名:Little Feat
■アルバム名邦題:リトル・フィート・ファースト
■動画リンク:「I’ve Been the One」
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あまり知られていませんが、ローウェル・ジョージはザッパのバンドに加わる前にファクトリー(The Factory)というバンドを結成して、既にデビューを果たしていました。
音源のリンクを貼っておきましょう。
Lowell George & The Factory – Smile, Let Your Life Begin
このバンドはフォークロックといった感じの音楽をやっています。
ザッパがファクトリーをプロデュースしたことがきっかけで、ローウェルはザッパのバンドに加入することになります。
一方でローウェル・ジョージは、尺八やシタールなどに興味を持っていたり、ウェストコーストジャズも好むという一面も持っていました。
雑多なバックグラウンドを持っている人です。
リトル・フィートも最初は多様な曲を演奏していたそうですが、レコード会社と契約する時、あまりにもバラバラな音楽性に難色を示されたそうです。
そこで彼らは少し音楽性を整理して、ようやくレコード会社との契約を勝ち取ることができました。
その結果がこのファーストアルバムです。
このアルバムがややこじんまりとした印象を受けるのは、そうしたいきさつが関係しているのかもしれません。
ただこの曲ではペダル・スチールが効果的に使われていて、情感あふれる名曲に仕上がっています。
8位「Long Distance Love」(アルバム:The Last Record Album)
■曲名:Long Distance Love
■曲名邦題:ロング・ディスタンス・ラヴ
■アルバム名:The Last Record Album
■アルバム名邦題:ラスト・レコード・アルバム
■動画リンク:「Long Distance Love」
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今回はサードアルバムまでの曲ばかりになってしまいましたが、それ以外の時期からこの曲だけご紹介しておきましょう。
私は後期のアルバムも嫌いではないのですが、強く推したい曲がないように思いました。
曲重視から演奏重視に変わったせいもあるかもしれません。
たとえば「The Last Record Album」に入っている「Romance Dance」など演奏は最高ですが、もう少し曲が良ければと感じたりもします。
そういう中でこの曲や「All That You Dream」など、良い曲もあるんですけどね。
この頃のローウェル・ジョージは、以前ほどの存在感がなく、メンバーの1人という感じになっています。
どうやらドラッグの影響で体調が思わしくなかったこともあるようですが。
そういう中でもこういう名曲が書けるのはさすがです。
9位「Fat Man in the Bathtub」(アルバム:Dixie Chicken)
■曲名:Fat Man in the Bathtub
■曲名邦題:ファット・マン・イン・ザ・バスタブ
■アルバム名:Dixie Chicken
■アルバム名邦題:ディキシー・チキン
■動画リンク:「Fat Man in the Bathtub」
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先程このアルバムは、アメリカ南部音楽の影響を受けていると書きました。
具体的にはニューオリンズ音楽の影響が強いと言われています。
ニューオリンズの音楽は独特の雑食感があって、特にリズムはセカンドライン・リズムと呼ばれています。
この曲のイントロを聞いていただくと、どういうリズムを指すのかが、お分かりいただけると思います。
もしこの曲が気に入ったら、アラン・トゥーサン(Allen Toussaint)、ドクター・ジョン(Dr. John)、ミーターズ(The Meters)あたりを聞いてみるといいでしょう。
しかしこのバンドには、彼ら独自の魅力もありました。
それはローウェル・ジョージのスライド・ギターです。
この曲でも彼のスライドが縦横無尽に絡んでいて、この曲に更なる奔放さを加えています。
1:05ぐらいからのギターとリズムの絡みなどは、鳥肌ものです。
このアルバムが大傑作と言われるのは、独特のリズムとスライド・ギターの組み合わせゆえだと思います。
10位「Trouble」(アルバム:Sailin’ Shoes)
■曲名:Trouble
■曲名邦題:トラブル
■アルバム名:Sailin’ Shoes
■アルバム名邦題:セイリン・シューズ
■動画リンク:「Trouble」
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「Dixie Chicken」以降の彼らは、滑らかなフュージョンっぽい演奏が多くなりました。
今回は初期の曲を多めにしていますが、演奏面では「Dixie Chicken」以降の方が良いかもしれません。
今回ランキングを作成するにあたり、もっと後期の曲を多く入れることも考えてみました。
しかし最終的に、多様性よりも自分が考えるリトル・フィート像をご提案したいと思いました。
後期はいくら演奏が良くても、曲の魅力が落ちるのも理由の1つです。
しかしそれ以上に初期には格別な味わいがあって、そこに焦点を当ててご紹介したいと思ったからです。
たとえばこのシンプルすぎる曲に込められた質感はいかがでしょうか。
「I’ve Been the One」と同じ路線のカントリーバラードですが、シンプルな演奏ゆえに素材のすばらしさが感じられる名曲だと思います。