今回はエイフェックス・ツインのランキングを作成しました。
この人はクリエイティブ・モンスターで、希代の天才です。
普段どんなジャンルを聞いている方でも、一度耳を通しておくことをおすすめいたします。
聞いた後には、音楽の聞き方が変わってしまうかもしれませんから。
今回は比較的聞きやすい曲を中心に選んでみました。
できたらヘッドホンで聞いてみてください。
- 1 1位「4」(アルバム:Richard D. James Album)
- 2 2位「Xtal」(アルバム:Selected Ambient Works 85–92)
- 3 3位「Flim」(EP:Come to Daddy EP)
- 4 4位「On」(アルバム:51/13 Singles Collection)
- 5 5位「Avril 14th」(アルバム:drukqs)
- 6 6位「Vordhosbn」(アルバム:drukqs)
- 7 7位「Windowlicker」(シングル名:Windowlicker)
- 8 8位「Alberto Balsalm」(アルバム:…I Care Because You Do)
- 9 9位「Analogue Bubblebath」(アルバム:Classics)
- 10 10位「Z Twig」(アルバム:Selected Ambient Works Volume II)
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1位「4」(アルバム:Richard D. James Album)
■曲名:4
■アルバム名:Richard D. James Album
■アルバム名邦題:リチャード・D.ジェイムス・アルバム
■動画リンク:「4」
この種の音楽は、ドリルン・ベースと呼ばれています。
ドリルン・ベースは、ドラムン・ベースという音楽から派生したサブ・ジャンルです。
ドラムン・ベースは、リズムパートを換骨奪胎して、高速でタカタカと刻むリズムと、重低音のベースを組み合わせた音楽です。
一方ドリルン・ベースはその発展形で、もっと奔放で規則性がなく、少しノイジーな音楽を指します。
言葉で言い表すのは難しいので、この曲をお聞きになってみてください。
この曲は鋭い打ち込みと、太極拳ができそうな東洋的なメロディから成り立っています。
言葉だけだと、食い合わせが悪そうだと思うかもしれません。
しかしこの曲を聞けば、奇妙に融合していることがご理解いただけると思います。
もう1曲、この曲と並ぶ有名曲をご紹介しておきましょう。
どちらの曲も初めて聞いた人を半笑いにさせるところがありますね。
2位「Xtal」(アルバム:Selected Ambient Works 85–92)
■曲名:Xtal
■アルバム名:Selected Ambient Works 85–92
■アルバム名邦題:セレクテッド・アンビエント・ワークス・85-92
■動画リンク:「Xtal」
このアルバムは、石野卓球が選んだ「テクノ三種の神器」の1枚として知られています。
つまりテクノにおいては基本中の基本で、中でもこの曲は伝説の曲と言われています。
しかし私は最初この曲を聞いて、それほど良い曲だろうかと思いました。
思ったより聞きやすいと思ったぐらいで、世評の高さと自分の感想にギャップがあったのですね。
そこで繰り返し聞いてようやく、この曲の魅力に気づくことができました。
この曲の魅力は、アンビニエントと高揚感という組み合わせの妙です。
女性コーラスのような淡い音像は弛緩させつつ、同時に高揚させるという、不思議な効果をもたらしています。
アルコールとカフェインが含まれたドリンク剤のような中毒性を持った曲かもしれません。
彼の音楽には、いつもそういう二重構造があります。
一般的なテクノとは、少し違ったイメージの曲かもしれませんね。
ちなみに「Xtal」とは「クリスタル」と読むようです。
この曲にふさわしい名前ではないでしょうか。
3位「Flim」(EP:Come to Daddy EP)
■曲名:Flim
■EP名:Come to Daddy EP
■EP名邦題:カム・トゥ・ダディEP
■動画リンク:「Flim」
初期の彼は内にこもった狂気を、そのまま音に詰め込んでいました。
制御されていないところや、バランスが悪いところがあっても、むしろそれが美点となっていたように思います。
もしかしたら初期の魅力は、必ずしも音楽的とはいえない部分にあったかもしれません。
あやうい心象風景が、そのまま音楽の体裁をとったような。
その後彼はより分かりやすく、より音楽的に変化していきました。
純粋にメロディの美しさや音楽の内実で楽しめる音楽になっていきました。
この曲のメロディは本当に美しいですね。
私はエレクトロニカでは、アイ・アム・ロボット・アンド・プラウド(I Am Robot And Proud)が大好きなのですが、メロディセンスが似ているように感じます。
またこの曲の動画は、今回ご紹介した中でも特におすすめです。
曲に合った空の写真のスライドショーで、見ながら聞くと曲の魅力を倍増させてくれます。
4位「On」(アルバム:51/13 Singles Collection)
■曲名:On
■アルバム名:51/13 Singles Collection
■アルバム名邦題:51/13 エイフェックス・ツイン・シングルズ・コレクション
■動画リンク:「On」
アルバム名こそベスト盤っぽいですが、ごく一時期のシングルを集めた日本独自の編集盤にすぎません。
しかもシングル曲をリミックスしていますから、オリジナルとも少し違っていたりします。
しかしそれにもかかわらず、このアルバムは聞き逃せません。
たとえばこの曲などはいかがでしょうか。
アンビニエントでミニマルなイントロからして美しすぎます。
その後加わる暴力的な重低音のビートとの絡みは、いつ聞いてもゾクゾクしてきます。
このアルバムではもう1曲おすすめの曲があるので、リンクだけ貼っておきましょう。
こちらはテンション高めのトイ・ミュージックですね。
この人の音楽には子供がバッタの足をもぎ取るような、無邪気な暴力性を感じることがあります。
5位「Avril 14th」(アルバム:drukqs)
■曲名:Avril 14th
■アルバム名:drukqs
■アルバム名邦題:ドラックス
■動画リンク:「Avril 14th」
今回は各アルバムから1曲しばりで選曲しました。
当初は「サイロ(Syro)」から「minipops 67 (source field mix)」をご紹介予定でした。
しかしどうしてもこのアルバムから2曲ご紹介したいと思い、差し替えることにしました。
「minipops 67 (source field mix)」は、リンクだけ貼っておきましょう。
Aphex Twin – minipops 67 [120.2][source field mix]
まあ「drukqs」は2枚組ですから、2曲選んでもいいでしょう。
彼のようなアクの強い音楽を2枚聞き通すのはどうかと思うかもしれませんが、意外と大丈夫です。
時々こういう静かな曲が入っていますので、その都度耳がリセットされますから。
さすがの彼も、変態ハードな曲の連続ではまずいと思ったのでしょうか(笑)
この曲は坂本龍一のピアノ曲を思わせるところがあります。
教授がドビュッシーの影響を受けていることは有名ですが、この曲にもそういう趣きがありますね。
6位「Vordhosbn」(アルバム:drukqs)
■曲名:Vordhosbn
■アルバム名:drukqs
■アルバム名邦題:ドラックス
■動画リンク:「Vordhosbn」
上の曲と同じ「drukqs」からの曲です。
こちらは打って変わって、いかにもドリルン・ベースといった曲ですね。
IDM(Intelligent Dance Music)と呼ばれたりもします。
このアルバムが出た時、私はいくつか音楽誌を読んでいましたが、レビューでは意見が割れていました。
大絶賛しているものと、奥歯に何か挟まったような感じの低評価の意見がありました。
低評価を付けている人の理由は、このアルバムは前作を踏襲していて、新機軸を打ち出していないと言いたいようでした。
当時既にこの人は神格化されていました。
音楽のすばらしさだけでなく、革新性も求められていたように思います。
しかし彼が革新性を重視しなくなった時、手のひら返しをした音楽評論家がたくさんいました。
ただ20年経過した今、この曲を聞いてどう思うでしょうか。
私は高度にクリエイティブな音楽だと感じます。
逆に当時は革新的でも、時の洗礼を受けて色あせてしまった音楽もあります。
革新性というのは当時の文脈にすぎませんが、想像力豊かな音楽は時代を超えて訴えかけてくるものです。
今回私は「drukqs」を再評価しておきたいと思い、このアルバムから2曲選んでみました。
7位「Windowlicker」(シングル名:Windowlicker)
■曲名:Windowlicker
■曲名邦題:ウィンドウリッカー
■シングル名:Windowlicker
■シングル名邦題:ウィンドウリッカー
■動画リンク:「Windowlicker」
この曲はとても高く評価されています。
シングル「Windowlicker」はNME[要曖昧さ回避]の1999年ベストトラック・リストの1位に、ピッチフォーク・メディアの90年代ベストトラック・リストの12位に選出されている。
ちなみにこの曲がリリースされた10年後の2009年にも、ファン投票によって、ワープ・レコーズ(Warp Records)で最も好きな曲に選ばれています。
もしかしたら彼の曲の中でも、最も聞きやすい曲の1つかもしれません。
ちなみにこの曲は、イギリスで2017年に交通安全運動のCMソングになっています。
ただ曲名の「「Windowlicker」は「窓をなめる人」という意味で、ジャケットも相当キモいですが。。。
前半は少しきれいすぎるところがありますが、曲の後半ノイジーになる展開がいいですね。
ベック(Beck)などにも思いますが、ノイズの使い方には、その人のセンスが一番よく表れると思います。
8位「Alberto Balsalm」(アルバム:…I Care Because You Do)
■曲名:Alberto Balsalm
■アルバム名:…I Care Because You Do
■アルバム名邦題:アイ・ケア・ビコーズ・ユー・ドゥ
■動画リンク:「Alberto Balsalm」
この人は「テクノ界のモーツァルト」と呼ばれています。
音楽的にいえばモーツァルトとは全然似ていませんが、おそらくはその天才性と、奇人変人的なふるまいから名付けられたのかもしれません。
そこで彼の変人エピソードを調べてみました。
●10歳のころから曲を作ってたが、何故かピアノを壁に立てかけて鍵盤じゃなく弦を直接弾いていた
●16歳になるまで他人のレコードを聴いたことがなかった
●アメリカのSireレーベルと数億円と言われる巨額の契約金でサイン。その契約金で戦車(実際は装甲車)を購入
●多くの楽曲のリミックスを行っているが、嫌いな曲しか引き受けない。クソみたいな曲を少しでも減らしたいからというのがその理由(日本だと「バクチク」リチャード評によれば「最悪」)
多くの楽曲のリミックスを行っているが、嫌いな曲しか引き受けない。クソみたいな曲を少しでも減らしたいからというのがその理由である。
●ビョークにテレビの砂嵐の楽しみ方を教える
●ステージ上に犬小屋を設置し、終始その中で演奏する【1997年の第一回フジ・ロック・フェスティバルにて】。
ちなみに彼は涼しい顔で嘘を言うことでも知られています。
彼はあるインタビューで、購入した装甲車に乗っているかという質問に対して、潜水艦も買ったと答えています。
どこまでが本来のキャラで、どこまでが狙っているのかが分かりません(笑)
さてこの曲はそんな変態がつくったチルアウト・ミュージックです。
ダウナーで謎めいた雰囲気がすばらしいですね。
即効性のある曲ではありませんが、何度か聞く内にジワジワ浸透してきます。
9位「Analogue Bubblebath」(アルバム:Classics)
■曲名:Analogue Bubblebath
■アルバム名:Classics
■アルバム名邦題:クラシックス
■動画リンク:「Analogue Bubblebath」
このアルバムは1曲目が強烈です。
ジャミロクワイ(Jamiroquai)やケミカル・ブラザーズ(The Chemical Brothers)みたいなところがありますね。
今回は聞きやすい曲を中心に選曲しました。
この人には耳障りの良くない傑作が沢山ありますが、そういう曲については、文中にリンクだけ貼っておきました。
そういう曲に耐性がある人だけ聞いてみてください。
さてこのアルバムは、1995年にリリースされています。
1995年といえば「…I Care Because You Do」を発表し、方向性を模索していた時期。
まさに過渡期といえますが、彼は試行錯誤の過程で、こういうすばらしいシングルを何枚も生み出しています。
ただ多くのシングルはアルバム未収録でしたので、当時この編集版はとても重宝しました。
またこの頃から彼は別名、変名で作品を発表しはじめました。
この曲はAFX名義ですが、他にもPolygon Window、Caustic Windowなど、様々な名義で作品を発表しています。
10位「Z Twig」(アルバム:Selected Ambient Works Volume II)
■曲名:Z Twig
■アルバム名:Selected Ambient Works Volume II
■アルバム名邦題:セレクテッド アンビエント ワークス ボリューム 2
■動画リンク:「Z Twig」
アンビニエント・ミュージックは本来、1曲だけ抜き出す音楽ではないと思います。
しかしこの曲はポップで耳なじみが良く、初めて聞く人にもおすすめできる曲だと思いました。
彼は子供の頃から、シンセサイザーや様々な機材に親しんできました。
彼は早熟の天才で、11歳の時には雑誌に曲を応募して優勝しています。
初期の彼の音楽は「ベッドルーム・テクノ」と呼ばれています。
「ベッドルーム・テクノ」とは、ベッドルームで聞くような音楽のことではなく、自宅でつくった音楽のこと。
つまり宅録みたいな感じでしょうか。
彼は21歳の時、その成果を「Selected Ambient Works 85–92」として発表し、大きな反響を呼びました。
しかしこの2枚目では路線を変えてきました。
よりアンビニエントな作風になって、しかも2枚組です。
アンビニエントは売れる音楽ではありませんし、おそらく大きな賭けだったことでしょう。
その結果は吉と出ました。
このセカンド・アルバムは、イギリスのアルバム・チャートで11位を獲得しています。
私からしたら大胆な決断だったように思いますが、天才は斜め上の結果を出してくるのですね。
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