今回はプリティ・シングスのランキングを作成しました。
2020年5月15日このバンドのボーカル、フィル・メイ(Phil May)が亡くなりました。
このバンドはセールス面であまり報われませんでした。
しかし「S.F. Sorrow」と「Parachute」の2枚は、ロック史でも特筆すべき傑作だと思います。
- 1 1位「Balloon Burning」(アルバム:S.F. Sorrow)
- 2 2位「The Letter」(アルバム:Parachute)
- 3 3位「Rain」(アルバム:Parachute)
- 4 4位「Rip Off Train」(アルバム:Freeway Madness)
- 5 5位「Baron Saturday」(アルバム:S.F. Sorrow)
- 6 6位「Grass」(アルバム:Parachute)
- 7 7位「Bruise in the Sky」(アルバム:Silk Torpedo)
- 8 8位「It’s Been So Long」(アルバム:Live on Air: BBC & Other Trans)
- 9 9位「Tonight」(アルバム:Savage Eye)
- 10 10位「Office Love」(アルバム:Cross Talk)
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1位「Balloon Burning」(アルバム:S.F. Sorrow)
■曲名:Balloon Burning
■曲名邦題:風船は燃えている
■アルバム名:S.F. Sorrow
■アルバム名邦題:S.F.ソロウ
■動画リンク:「Balloon Burning」
このバンドの代表曲は、今一つ分かりにくいと思います。
初期のガレージ・ロック期にはシングルヒットがありますが、今回その時期は対象外ですし。
それ以降はアルバムとシングルどちらもあまり売れていません。
とはいえ有名曲はなくても名曲は数多く、10曲に絞るのに苦労しました。
特に名作「S.F. Sorrow」「Parachute」は良い曲が多く、どの曲を選んでも紙一重かもしれません。
彼らはアルバム単位で聞いた方が良いような気がします。
どれが1位とは決め難いのですが、本日の気分ではこの曲を推したいと思います。
性急なリフとコーラスの組み合わせがかっこいいですね。
2位「The Letter」(アルバム:Parachute)
■曲名:The Letter
■曲名邦題:ザ・レター
■アルバム名:Parachute
■アルバム名邦題:パラシュート
■動画リンク:「The Letter」
このアルバムの前に大事件がありました。
ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)の元メンバーで、ギターのディック・テイラー(Dick Taylor)が脱退したのです。
前作までは彼のギターがサウンドの中核だっただけに、かなりの大打撃だったはず。
ストーンズでいえば、キース・リチャーズ(Keith Richards)が脱退するようなものです。
しかし残されたメンバーは、前作を上回る作品をつくりあげました。
ここには前作のような万華鏡サウンドはありませんが、その分楽曲の魅力で補いました。
地味で華やかさに欠ける曲も多いのですが、淡い音像から浮かび上がる繊細なメロディは絶品です。
ここでは特に内省的でかわいらしい、極私的に偏愛している曲を選んでみました。
3位「Rain」(アルバム:Parachute)
■曲名:Rain
■曲名邦題:レイン
■アルバム名:Parachute
■アルバム名邦題:パラシュート
■動画リンク:「Rain」
このバンドはデビュー当時、とてもスキャンダラスで悪名高き存在でした。
ついにはステージに火を点ける蛮行によって、業界内で悪評が知れ渡ってしまいました。
型にはまらない無軌道なところは、音楽にも表れています。
彼らの楽曲はまとまりが良くありません。
1曲の中で曲調がめまぐるしく変化する場合もあれば、短い曲をメドレー形式で繋げている場合もあります。
この曲もAメロ、Bメロ、サビみたいな構成ではありません。
2分19秒という短い曲なのに、イントロが33秒、曲の最後に雨の効果音が22秒入っています。
アルバムでも2位の「The Letter」の次の曲なのですが、その流れで聞いて初めて良さを実感できる曲です。
こういうところをおもしろいと思えるかどうかが、このバンドの評価する上でポイントになるかもしれません。
4位「Rip Off Train」(アルバム:Freeway Madness)
■曲名:Rip Off Train
■曲名邦題:リップ・オフ・トレイン
■アルバム名:Freeway Madness
■アルバム名邦題:フリーウェイ・マッドネス
■動画リンク:「Rip Off Train」
このバンドは時期によって音楽性が違います。
私なりの表現で移り変わりを順番に並べてみました。
1.元祖ガレージバンク期
2.サイケデリック・ロック期
3.ウェストコースト・ロック期
4.ブリティッシュ・ハードロック期
5.パワーポップ期
この曲は3のウェストコースト・ロック期の曲です。
ジャケットがイーグルス(The Eagles)っぽいと思う人がいるかもしれません。
実際このアルバムは、大ヒットしたイーグルスのファースト・アルバムの半年後にリリースされています。
中にはイーグルスかクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(CSN&Y)のようなコーラスの「カントリー・ロード(Country Road)」という隠れ名曲も収録されています。
その変化にはレコード会社の移籍が関係しているもしれません。
彼らはハーヴェスト・レコード(Harvest Records)から、大手のワーナー・ブラザース(Warner Bro)に移籍しました。
一般に所属するレコード会社が大きくなれば、売れることが求められます。
この曲は彼らなりに売れ線を狙ったのかもしれません。
5位「Baron Saturday」(アルバム:S.F. Sorrow)
■曲名:Baron Saturday
■曲名邦題:バロン・サタデイ
■アルバム名:S.F. Sorrow
■アルバム名邦題:S.F.ソロウ
■動画リンク:「Baron Saturday」
このアルバムは、ザ・フー(The Who)の「トミー(Tommy)」に先駆ける、世界初のロックオペラだといわれます。
ロックオペラとは、アルバムを通してストーリーが語られていたり、コンセプトが統一されているアルバムのこと。
このアルバムでは「S.F. Sorrow」という主人公の孤独な人生がテーマです。
これから歌詞を読む方のために、ストーリーは伏せておきたいと思います。
主人公は「Baron」つまり「男爵」のようですが、彼は現実感を失い、自分の人生を他人事のように見ています。
悲しみすらリアルに感じられません。
主人公に対して人からこんな風に警告される始末です。
「あなたの人生はクールだ。良識が支配している。そして人生を捨て去ってしまうのだ」
6位「Grass」(アルバム:Parachute)
■曲名:Grass
■曲名邦題:グラス
■アルバム名:Parachute
■アルバム名邦題:パラシュート
■動画リンク:「Grass」
イギリスのアート・スクールは多くの一流ミュージシャンを輩出しています。
このバンドのリーダー、フィル・メイ(Phil May)もアートスクール出身。
それゆえかこのアルバムには、独特の美意識が強く感じられます。
アルバムジャケットはヒプノシスの作品ですが、このアルバムの少しくすんだ黄昏感をよく表しています。
そして収録されているのは、味わい深い鈍色の曲ばかり。
タイプは異なりますが、ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)の「ペット・サウンズ(Pet Sounds)」のような、ダウナーな陰りが魅力です。
この曲はこのアルバムでも、美しさのピークともいえるかもしれません。
特にギターが空間を切り裂く瞬間の美しさは、まさにアート・ロックと呼びたくなります。
7位「Bruise in the Sky」(アルバム:Silk Torpedo)
■曲名:Bruise in the Sky
■曲名邦題:ブルーズ・イン・ザ・スカイ
■アルバム名:Silk Torpedo
■アルバム名邦題:シルク・トーピード
■動画リンク:「Bruise in the Sky」
※動画はメドレーになっていますが、この曲から再生するようにしています
彼らは前作で大手のワーナーからアルバムをリリースしましたが、1枚で契約が終わってしまいました。
その後彼らは、レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)のスワンソング・レコード(Swan Song Records)に移籍し、このアルバムをリリースしました。
そのせいかハードロック色を強めているように思います。
この曲はそういう曲ではありませんが、イントロはいきなりツインギターから始まりますし。
あとこちらもヒプノシスがアルバムジャケットを担当しています。
見開きにするとこんな風になります。
船と魚雷の上に座る女性とは訳が分かりません(笑)
8位「It’s Been So Long」(アルバム:Live on Air: BBC & Other Trans)
■曲名:It’s Been So Long
■曲名邦題:イッツ・ビーン・ソー・ロング
■アルバム名:Live on Air: BBC & Other Trans
■動画リンク:「It’s Been So Long」
プリティ・シングスといえばフィル・メイです。
このバンドを初めて知った方からすると、いきなり何だと思われるかもしれませんが。
このバンドは音楽性がめまぐるしく変わっているだけでなく、メンバーの入れ替わりも激しいです。
フィルを除いても、過去に33人のメンバーが在籍していますし。
ただいつもバンドの中心にはフィル・メイがいました。
確かにこのバンドはストーンズやザ・フー(The Who)のような、大きな成功を手にすることはできませんでした。
またフィル・メイも、スティーヴ・マリオットのような名声を得られていません。
しかし虚心坦懐に彼らの音楽を聞くと、そうなったとしても不思議ではなかったと感じます。
9位「Tonight」(アルバム:Savage Eye)
■曲名:Tonight
■曲名邦題:トゥナイト
■アルバム名:Savage Eye
■アルバム名邦題:サヴェージ・アイ
■動画リンク:「Tonight」
ここからはいきなり曲調が変わります。
この曲などはラズベリーズ(Raspberries)のようにポップな曲ですし。
この時期は音楽性が変化しただけでなく、バンド内の人間関係もかなり荒れていたようです。
大黒柱フィル・メイはこの時期、他のメンバーと対立していました。
そうした中でステージをすっぽかしたので、フィルはバンドを解雇されてしまいました。
自ら脱退したという説もあるようですが。
一方他のメンバーはプリティ・シングスというバンド名に固執せず、メトロポリス(Metropolis)という名前で活動を継続しました。
事実上プリティ・シングスの解散を意味しています。
このシングルはフィル脱退前にリリースされましたが、曲の印象に反してバンドは危機に瀕していました。
10位「Office Love」(アルバム:Cross Talk)
■曲名:Office Love
■曲名邦題:オフィス・ラヴ
■アルバム名:Cross Talk
■アルバム名邦題:クロス・トーク
■動画リンク:「Office Love」
バンドを脱退したフィルですが、その後自身が率いるThe Fallen Angelsというバンドで活動していたようです。
そんなメイの元に、あるオファーが飛び込みました。
それは1960年代後半のメンバーで、1日限りの再結成ライブをやるというもの。
それをきっかけに再結成し、このアルバムが作られました。
このアルバムではパワーポップ路線が更に強化されています。
1曲目の「アイム・コーリング(I’m Calling)」など良い曲がそろっています。
それでも売れませんでしたが、昔からの根強いファンがいるおかげで、彼らはライブでバンドを継続できたようです。
確かにこのバンドは商業的には報われませんでした。
ただ過去のすばらしい作品を覚えていたファンの存在は、後に彼らの心強い支えになりました。
つまりビッグセールスが得られなかったとしても、コアで熱心なファンを獲得して生き延びたのですね。
私も微力ながら彼らの魅力をお伝えすべく、この記事を書いてみました。
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