今回はサリフ・ケイタのランキングを作成しました。
彼はアフリカン・ポップ・シーンをけん引した人でした。
その魅力はボーカルに尽きるといっても過言ではありません。
彼の強靭で美しい声があれば、バックの演奏すら必要ないと思えるほどです。
まさに規格外の声といえるでしょう。
- 1 1位「Yamore (featuring Cesaria Evora)」(アルバム:Moffou)
- 2 2位「Laban」(アルバム:M’Bemba)
- 3 3位「Seydou」(アルバム:La Différence)
- 4 4位「Bah Poulo」(アルバム:Un Autre Blanc)
- 5 5位「Nyanafin」(アルバム:Amen)
- 6 6位「Bobo」(アルバム:M’Bemba)
- 7 7位「Folon」(アルバム:Folon)
- 8 8位「Tolon Willie (The Party Is On)」(アルバム:Papa)
- 9 9位「Nou Pas Bouger」(アルバム:Ko-Yan)
- 10 10位「Soro(Afriki)」(アルバム:Soro)
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1位「Yamore (featuring Cesaria Evora)」(アルバム:Moffou)
■曲名:Yamore (featuring Cesaria Evora)
■曲名邦題:ヤモレ(フィーチャリング セザリア・エヴォラ)
■アルバム名:Moffou
■アルバム名邦題:モフー
■動画リンク:「Yamore (featuring Cesaria Evora)」
民族楽器使ったアコースティック・アルバムの曲です。
アルバム・タイトルの「Moffou」とは、キビの茎でつくられた楽器とのこと。
いかにもアフリカのアーティストらしいと思われるかもしれません。
しかし彼は、デビュー時からテクノロジーを駆使した先端的な音楽をやっていました。
逆にアコースティック路線は、彼にとって挑戦だったようです。
サリフは当初、<アコースティック・アルバムを作ってほしいというレーベルからの申し出に難色を示したという。しかし、それもひとつの挑戦と考え直し、制作に取りかかったようだ。
「日々の演奏が刺激的であるためには、革新的でなければいけない。だから、いつでも私はラディカルであろうとしている。私は、自分のアルバムをすべて同じサウンドにしようとは思わない。
彼は最初気乗りしなかったようですが、見事な作品をつくり上げました。
彼はこの曲で、カボ・ヴェルデの人気歌手、セザリア・エヴォラ(Cesaria Evora)とデュエットしています。
アコーディオンの演奏も印象的で、聞いていると身体がポカポカ温まってきす。
2位「Laban」(アルバム:M’Bemba)
■曲名:Laban
■曲名邦題:ラバン
■アルバム名:M’Bemba
■アルバム名邦題:ムベンバ
■動画リンク:「Laban」
この曲の聞きどころは後半です。
特に最後の方の躍動感をお聞きください。
前半1:39からは、ロス・ロボス(Los Lobos)風のパーカッションが入っています。
どことなくラテン・プレイボーイズ(Latin Playboys)っぽいかもしれません。
しかしここまでだったら、この順位には推しません。
この曲の聞きどころは4:21から。
女性コーラスとの掛け合いから、徐々にサリフの歌が熱を帯び始めます。
その後ジプシー・ギターが入って、その後またサリフの歌が始まりますが、熱気のあまり声がうわずっているように感じます。
最後の方の高揚感は、ほとんどトランス状態ではないでしょうか。
3位「Seydou」(アルバム:La Différence)
■曲名:Seydou
■曲名邦題:セイドゥ
■アルバム名:La Différence
■アルバム名邦題:ラ・ディフェロンス
■動画リンク:「Seydou」
彼はこのアルバムで、ベスト・ワールド・ミュージック2010を受賞しています。
以前から彼はユッスー・ン・ドゥール(Youssou N’Dour)と並んで、アフリカン・ポップを代表する存在でした。
ようやくこれで実力と知名度に、名誉が追い付いたというわけです。
この作品では、ジョー・ヘンリー(Joe Henry)がプロデュースしている曲があったり、ビル・フリゼール(Bill Frisell)がギターを弾いている曲もあって、大きな話題になりました。
しかしそれよりもやはりサリフの歌が圧倒的です。
初期の彼は、迫力や強靭さを前面に打ち出していました。
もちそん歌の強度だけで語れる人ではありませんし、初期の歌もすばらしかったと思います。
しかし私は滋味に富んだ後年の歌の方に、軍配を挙げたいと思います。
この曲は「Folon」の収録曲の再演ですが、歌の説得力ではこちらが上回っているかもしれません。
当時彼は60歳。
最初から彼は圧倒的なシンガーでしたが、後年は更に成熟の度合いを深めています。
4位「Bah Poulo」(アルバム:Un Autre Blanc)
■曲名:Bah Poulo
■アルバム名:Un Autre Blanc
■動画リンク:「Bah Poulo」
前作「Tale」では、現代的なサウンド・プロダクションが話題を呼びました。
今回はそのアルバムから選曲していませんが、決して悪くない出来です。
1曲ご紹介しておきましょう。
Salif Keita – C’est Bon,Cest Bon
その後リリースされたこの作品は、彼の集大成といえるアルバムかもしれません。
彼はこの作品を最後に、レコーディングを引退するそうです。
音楽活動は続けるようですが、新作が届けられなくなるのは、少し寂しいものがありますね。
さてこの曲は哀愁漂うラテン・ナンバー。
この人の声はジプシー・キングス(Gipsy Kings)を思わせるところがありますが、ラテンの曲だとより一層そう感じます。
2:34など迫力のある歌声は健在ですから、もったいないと思ってしまいます。
5位「Nyanafin」(アルバム:Amen)
■曲名:Nyanafin
■アルバム名:Amen
■アルバム名邦題:アメン
■動画リンク:「Nyanafin」
彼は初期の2枚で、テクノロジー色の強いサウンドを取り入れていました。
しかしその後彼は、アコースティック楽器の導入など、サウンド面のバリエーションを広げていきました。
この曲はアコースティック・ギターから始まっています。
1:08からリズムが入りますが、特にベースはチョッパーのフレーズがあったりなど、躍動感のある演奏を披露しています。
全体としては、トロピカルなアフリカン・ポップスといったところでしょうか。
女性コーラスの後、2:33から突き抜けるサリフのシャウトが最高です。
このアルバムでは、ジョー・ザヴィヌル(Joe Zawinul)がプロデュースし、ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)がゲスト参加しています。
当時パット・メセニー(Pat Metheny)などのフュージョン系のプレイヤーは、アフリカ音楽のダイナミズムに、新しい音楽の可能性を見ていました。
そういう彼らの注目を浴びていたのが、サリフ・ケイタです。
ちなみにザヴィヌルとサリフは、このアルバム以外でも共演しています。
Joe Zawinul & Salif Keita: Bimoya
サリフは、後にリチャード・ボナ(Richard Bona)など、後続が活躍する地平を切り開いた先駆者でした。
6位「Bobo」(アルバム:M’Bemba)
■曲名:Bobo
■曲名邦題:ボボ
■アルバム名:M’Bemba
■アルバム名邦題:ムベンバ
■動画リンク:「Bobo」
曲名の「Bobo」とはパリの言葉で、おしゃれで自由気ままに暮らす優雅なパリジャンを指す言葉なのだそうです。
彼は1984年にパリに移住しました。
彼はマリ共和国の王族、ケイタ王室の家に生まれています。
そんな彼が、なぜパリに1人移住しなければいけなかったのでしょうか。
それは彼がアルビノだったからです。
アルビノとは色素欠乏症とも呼ばれる遺伝子疾患で、黒人でも肌が白いのが特徴です。
彼が生まれたマリでは皆肌の色が黒いので、サリフは本国で差別され、勘当同然の状態で家を追い出されました。
彼は現在自身の経験を元に、アルビノを支援する活動をしています。
さてこの作品は前作「Moffou」と同じくアコースティック路線のアルバムです。
この曲ではギターが2本か3本入っているようですが、ナチュラルな響きが美しいですね。
彼の人生は辛いことが多かったようですが、それらの経験をすばらしい音楽として昇華しています。
7位「Folon」(アルバム:Folon)
■曲名:Folon
■曲名邦題:フォロン
■アルバム名:Folon
■アルバム名邦題:フォロン
■動画リンク:「Folon」
彼の最高傑作は人によって意見が分かれます。
「Soro」「Moffou」「M’Bemba」あたりと並んで、このアルバムを挙げる人も少なくありません。
このアルバムは曲の出来が良く、更に歌唱が熟成しています。
彼の名前を有名にしたローカル・ヒット曲「Mandjou」も収録されていますし。
前作「Amen」から初めて長いブランクを置きましたが、その間彼は様々な人と共演していたようです。
この作品の前には、スティーヴ・ヒレッジ(Steve Hillage)との共作「L’Enfant Lion」を発表しています。
そのアルバムから、1曲ご紹介しておきましょう。
Salif Keita – Donsolou LEnfant Lion
この作品のメイン・プロデューサーは、ジャン=フィリップ・リキエル(Jean-Philippe Rykiel)ですが、この曲ではウォーリー・バダロウ(Wally Badarou)がプロデュースしています。
ウォーリーは詩情あふれるすばらしいストリングスを提供していますね。
サリフは抑え気味に歌っていますが、実に沁みる歌を聞かせてくれます。
彼の声は張りがあって芯が強いせいか、スローでも不思議と力強さを感じます。
8位「Tolon Willie (The Party Is On)」(アルバム:Papa)
■曲名:Tolon Willie (The Party Is On)
■アルバム名:Papa
■アルバム名邦題:パパ
■動画リンク:「Tolon Willie (The Party Is On)」
このアルバムは異色作です。
まずレーベルが、ジャズの名門ブルーノート・レコード(Blue Note Records)ということ。
初期の彼はマンゴー・レコード(Mango Records)でしたが、ジャズ・レーベルに移籍しました。
一方共同プロデュースの相手がリヴィング・カラー(Living Colour)のヴァーノン・リード(Vernon Reid)ですから、かなり異色の組み合わせといえるでしょう。
リヴィング・カラーといえば、ワイルドなギターが特徴のロック・バンドです。
ただそんな奇妙な組み合わせの割に、作品自体は無難に仕上がっています。
無難すぎるのが、逆に問題点といえるかもしれません。
正直アルバムの出来は、それほどかんばしくありません。
とはいえこの曲など良い曲も入っていますが。
彼は次作に取り掛かる前に、心機一転本国マリに帰国し、冒険作「Moffou」を発表しています。
9位「Nou Pas Bouger」(アルバム:Ko-Yan)
■曲名:Nou Pas Bouger
■曲名邦題:ヌウ・パ・ブジェ
■アルバム名:Ko-Yan
■アルバム名邦題:コヤン
■動画リンク:「Nou Pas Bouger」
よくアフリカの音楽は、アフリカン・ポップ(アフロ・ポップ)と一括りにされがちですが、その内実は様々です。
この頃の彼は、アフリカン・エレクトリック・ファンクと呼んだ方が良いかもしれません。
元々彼はジェームス・ブラウン(James Brown)を好んでいましたから、こういう路線は大歓迎だったかもしれません。
この曲のギターにも、少しジェイムス・ブラウンっぽいところがありますし。
ちなみにアフリカでは、アメリカのブラック・ミュージックが人気のようです。
違うアフリカのアーティストのインタビューを読んだ時、アフリカの若者はローカルのミュージシャンより、マイケル・ジャクソンの方が聞かれていると言っていました。
また一部のアフリカ地域では、音楽を仕事にすることが難しいようです。
彼の生まれた土地でも、グリオ(吟遊詩人)と呼ばれる音楽を生業をする人は、社会階層の底辺なのだそうです。
そういう環境に限界を感じた彼は、マリ共和国の首都バマコに出る決心をしました。
彼は1978年スーパー・レイル・バンド(Super Rail Band)のメンバーになり、その後アンバサドゥール(Les Ambassadeurs)に加入しています。
その後パリに移住してから、ようやく世界的にブレイクすることができました。
このアルバムは前作の路線が踏襲されています。
少しポップになったところが一部で不評だったようですが、この曲など今も一聴の価値があると思います。
10位「Soro(Afriki)」(アルバム:Soro)
■曲名:Soro(Afriki)
■曲名邦題:ソロ
■アルバム名:Soro
■アルバム名邦題:ソロ
■動画リンク:「Solo(Afriki)」
この曲は長いのでラストに配置しましたが、もっと上の順位でもおかしくありません。
当時彼はパリに移住して、新しい土地で音楽活動を始めていました。
当時は追い風が吹いていたかもしれません。
当時のパリは、ワールド・ミュージックの一大発信地でした。
1989年に「ランバダ(Lambada)」をヒットさせたカオマ(Kaoma)も、フランスのグループです。
それらの多くは素朴で土着的な音楽ではなく、西洋音楽の味付けが施されていました。
この曲にも坂本龍一っぽいところが感じられないでしょうか。
このアルバムのプロデューサーはイブラヒム・シラ(Ibrahima Sylla)とフランソワ・ブレアン(Francois Breant)です。
彼らはサリフという逸材を、骨太なエレクトリック・サウンド上で表現しました。
タイプこそ違いますが、JAGATARA(じゃがたら)あたりが好きな方に気に入られそうな感じがします。
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